毛ガニのいろいろ

・毛ガニは邪魔者だった

毛ガニは、昔から日本で食べられていたわけではありません。現在は高級食材の毛ガニですが、かつては漁の網にかかって邪魔者扱いされていた毛ガニ。1930年くらいまでは、肥料として使われていました。毛ガニが食べ物として認識されていなかった時代があったなんて、現在では考えられませんよね。
 

・毛ガニが食べられるようになった時期

1930年代中頃くらいに邪魔者ではなく、毛ガニを食べる目的での漁が始まりました。缶詰にされ食べ物として取り扱われるようになったのです。終戦後、北海道渡島地方の長万部町で、食材不足で駅弁の販売が難しい状況にありました。そこで、弁当の代わりに代用品として毛ガニを茹でた「煮カニ」を販売してみたところ、手軽に買える価格だったこともあり大人気になったそうです。その後、煮カニから試作に試作を重ね駅弁のかにめしが誕生し、全国区で有名になったそうです。

・市場に出回っている毛ガニは、すべて天然の毛ガニ

全身にびっしり生えている短い毛。この短い毛で水の流れを察知し、タコなどの天敵から身を守っていると言われています。毛ガニの産地は、北太平洋の広い海域に分布しています。水深150mより浅い水温15℃以下の泥や砂の中に生息しています。毛ガニは、天然物しか市場に流通していません。なぜなら、毛ガニは成長するのに時間がかかるためコストが合わず養殖は難しいそうです。
毛ガニ漁は、傷がつかないように「カゴ漁」という方法で漁を行っています。北海道の毛ガニの漁獲量は昔に比べると激減しています。そのため資源保護のため、様々な厳しい漁獲規制があります。その一つに甲長8cm以上のオスのみしか漁獲できません。メスは漁獲禁止となっています。他にも様々な漁獲規制があります。
 

・毛ガニ漁獲時期

北海道の毛ガニ漁は下記の図のように地域を変えながら、通年水揚げがあります。

宗谷・オホーツク海

毛ガニの産地として、一番有名なのがオホーツク海です。オホーツクは冬になると、流氷がやってきます。この流氷に豊富なプランクトンが含まれていて、流氷が溶け出す3〜4月ころに毛ガニのエサであるプランクトンがたくさん増えます。オホーツクの海はとても冷たいので、毛ガニはこの寒い海で生き残るため身が締まり、たくさんのプランクトンを食べ栄養をたっぷり蓄え、一年の中も最もおいしい時期の毛ガニになります。毛ガニは脱皮を直前に控え、旨味の強い最高品質の身がぎっしり詰まっている状態で水揚げされます。

日高

12月〜2月の時期に北海道内で唯一、漁が解禁されている地域です。日高沖は、黒潮と親潮がぶつかり合う海域で、エサとなるプランクトンが豊富です。日高の海水温の低い冬に獲れる毛ガニは、身が締まっていると言われています。
 

根室・厚岸

大黒毛ガニは、厚岸の「大黒島」沖で水揚げされる毛ガニのことを言います。厚岸沖は暖流と寒流がぶつかり合う海域で、エサとなるプランクトンが豊富です。市場に流通している毛ガニは大抵、400〜500g前後ですが、大黒毛ガニは、1尾800g以上の色が良く、身入りの良い傷がない毛ガニだけを漁師が選別し、食べ応えのある特大の毛ガニのことを言います。

十勝・釧路

釧路沖で漁獲される毛ガニは、水温の下がるとても寒い時期に水揚げが行われます。9月から漁獲許容量に達するまで前・中・後期の３期に分けて操業されます。この海域は海藻が豊富で厳しい寒さもあり、身が締まった毛ガニが水揚げされます。

噴火湾・胆振

長万部町といえば、駅弁の「かにめし」発祥の地です。そんな長万部は噴火湾にあります。世界的にめずらしい天然ラジウム（放射線）を含む温泉もあります。この温泉地にある「巨大な石灰華ドーム」は世界に2つしかないそうです。このような温泉地から湧き出るミネラルが海に流れ込むことが毛ガニの味にも影響を与えているのではと言われています。長万部で水揚げされる毛ガニは「黄金毛ガニ」と呼ばれていて、繊細な身と濃厚なカニみそが魅力です。